Architecture and Morality / Orchestral Manoeuvres in the Dark (1981, 英)

ベスト・オブ・OMDなんですかね。

“Architecture and Morality”、つまり「建築と道徳」というタイトルですが、これはイギリスの建築史家であるデイビット・ワトキンの著書「Morality and Architecture (1977)」のもじりですね。同じレーベルのバンド・ Martha and the Muffinsマーサ・ラッドリー(ねえちゃん)が「こんなタイトルにしたらええやないの?」ということで決まったそうです。

前作と比べて、全体的に実験的要素は身を潜め、分かりやすい「シンセポップ」がほとんどを占めます。

ただ、次回作でその反動がきます

  1. “The New Stone Age” 3:22
  2. “She’s Leaving” 3:28
  3. “Souvenir” 3:39
  4. “Sealand” 7:47
  5. “Joan of Arc” 3:48
  6. “Joan of Arc (Maid of Orleans)” 4:12
  7. “Architecture and Morality” 3:43
  8. “Georgia” 3:24
  9. “The Beginning and the End”

The New Stone Age

初っ端からロックな曲です。

ニュー・ストーン・エイジというと新石器時代ですが、OMDは「新しい石器時代が来た」というニュアンスで歌ってます。

世紀末(= The New Stone Age)になって悔やんでいる様子が再現されてると思います。

当時は核の脅威や東西対立がリアルタイムだったと思うので、こういうことを言いたかったのかもしれません。

今で言うJ-ROCKの4つ打ちみたいなキックに、OMD珍しくギターをアンディ(モジャモジャ)が弾いてます。

コードをジャカジャカやっているだけなんですが。

KORG MicroPresetの悲鳴みたいなメロディが合わさってきます。この機種はモノフォニック・シンセ=単音しか出せないのですが、オーバーダブして、ところどころハーモニーを作ったりしていますが、これが秀逸なんです。

She’s Leaving

1曲目とは違い地に足がついてる感じの曲です。

ヨーロッパ限定でシングルカットされました。

イントロの数小節がマイナーしていて、すぐにメジャーになるところ、こいつらぐらいしか出来ないと思います。

でも使っているコードはメジャーばっかりなんですよね。

どういう仕組みかというと、曲の頭のコードはD△です。

D△ | C △

でも例えばAメロの進行は

G△ | C △ | G△ | C △

なんですよね。

つまり曲全体はCメジャースケールです。

でもD△はCメジャースケールには登場しません。

ディグリーネームで言うとメジャースケール上でのⅡ△と言うことになり、

これはドッペルドミナントですね。

ドッペルドミナントとは「ドミナントのドミナント」のことで、浮揚感や不安感を感じるコードです。

この作用をうまく使ってますね。

何を言ってるかわかりません。

Souvenir

UKシングルチャートで最高3位まで行ったヒットソングなんですが、フロントマンのアンディ(くせ毛)は作曲に参加してません。

この曲はポールとキーボードのマーティン・クーパーが作りました。

自分が関与してないのにヒットソングになったこの曲に関してアンディはあんまり気に入ってないそうですが、良いベース弾いちゃってます。

初めから鳴ってる「ふぅううう」って音は合唱団のテープをピッチダウンさせて、ループしたもののようです。

元メンバーのデイブ・ヒューズ(印象に無い)の考案みたいですよ!

曲自体はすごく良くて、このキャッチーさというか完成度の高さはベストオブシンセポップと言ってもいいと思います。

問題はPVで、歌ってるポール君をアンディ君(くるくる)が迎えに行くという謎演出です。完成度は高いんですよ。でも

この2人ってやっぱりアレなんか??

Sealand

最近ライブでよくやってるみたいです。

Sealandというのはイギリス空軍基地の名前みたいです。

ただ別に空軍基地を謳ってるわけではなく、Sea(海)とLand(陸)のビジュアル的なイメージからインスピレーションしたみたいです。

アンディの歌が入ってくるのは3分後くらいですが、全然イケます。

こういう変な哀愁と、湿った懐かしさはコイツらじゃないと書けないと思います。

日本人がこういう曲作ったら、童話みたいとか言われて散々なんでしょうね。

最後の蒸気船みたいなノイズ音はKORG MicroPresetですね。

まあ、A面の最後にふさわしいと思います。

Joan Of Arc

D△ | D △ | G △ | A △ D △

というコード進行が印象的ですね。

というぐらいで、まあ、歌詞はいいんですが、そのくらいのレベルですね。

シングルカットされました。

というか、大変なことに次のトラックもジャンヌダルクなんですよ。

当時はジャンヌがイングランドで死刑になってから550年記念だったみたいで、500年に一回のジャンヌちゃん萌えだったアンディ(モジャモジャ)の趣味ですね。

でも

“Hold you in my arms and take you right away”

なんて言ってますけど、大丈夫なんでしょうか。

Joan Of Arc (Maid Of Orleans)

こっちが本命です。

このPVに出てくる建物、なんとThe Manor Studioみたいです。

前曲に引き続きジャンヌダルクについて歌った曲です。

Maid of Orleans (The Waltz Joan of Arc)

と後に改名されたように三拍子(6/8)の曲です。

イントロのコラージュされた奇妙なノイズが終わると、

メロトロンの「3 Strings」で奏でられるメロディが始まります。

ジャンヌダルク伝説にマッチした歴史の重みを感じされる名旋律になってますね。

メロディやコーラスもいいんですが、僕はドラムが大好きです。

ノリを踏んでくるバスドラと、空間に響く感じのスネア&タムが絶妙です。

後半になると結構疲れてきますが、それが良い味出してます。

このアルバムのベスト・チューンですね。

ベスト・オブ・OMDとか言いましたが、B面はこの曲で終わったほうがいいです。

Architecture & Morality

名曲ぞろいのアルバムのタイトル曲なので待していたら、効果音のコラージュでした。。。。

「なんやこのやっつけ曲は!」と憤慨していると、

公式サイト「3日で作りました☆」と書いてありまして、CDを割りました。

Georgia

次回作の「Dazzle Ship」っぽい、底抜けの明るさと、ラジオのサンプルがエッセンスになっている曲です。まあ初期っぽい部分もありますけど。

彼らが何も考えずに作った感じがすごいあって、それも好きなんですけどね。

The Beginning And The End

もともとは前身バンドであるVCL XIでやってた曲っぽいです。

当時のファン機関紙によると、この曲は「上手にできた」そうです。

というのもこの曲、演奏が難しかったそうです。

というわけで、3作目にして彼らは、クラフトワークみたいな「オールドスクール・シンセポップ」でも「ニューウェーブ(ロック)」でも無いアイデンティティを確立したと思います。

これを持って彼らの出世作と言ってもいいと思います。

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