日本屈指のニューウェーブバンド、P-MODELとドラムマシンについての関係を書いていこうと思います。
テクノポップバンドと呼ばれますが、その正体はほとんどオルタナ/プログレッシブ/ニューウェーブな感じです。
またドラマーがいるので、ドラムマシンやリズムボックスより生ドラの方が割合が高いです。
(ここでは便宜上プログラム可能機種の登場以降をドラムマシン、プリセット選択型のものをリズムマシンとしています。)
初期Pの印象といえばこれとミュージカル・ホッチキスなのですが、実はそんなに使われていません。
これにプログラム機能がついたCR-78という噂もありますが、プリセットリズムしか使われてない上に、音楽産業廃棄物に掲載されている初期のライブ・セッティングシートにはことごとく”Roland CR-68”と記されているのでCR-68ということにしました。
使われているのは1stだけになります。その他、おそらく実機の音でなくシミュレートの音ですが『P-MODEL』の「No Room」、「Vista」、「Go Amigo」、『big body』の「幼形成熟BOX」に音色を聴くことができます。
これはおそらくヒラサワさんお気に入りドラムマシン、Roland R-8からの出力だと思われます。
CR-68/78の音色ははフィルコリンズやOMD、ゲイリー・ニューマンが使用していたことで有名です。
特にOMDの1stではかなりフィーチャーされていています。(「Red Frame/White Light」は「美術館で会った人だろ」と同じパターンが聴けますね。)
ではP-MODELでは、となるとやはり1st収録の「美術館で会った人だろ」です。
このリズム、本体内蔵のリズムパターンで、プリセット名は『RHUNBA』です。
その他に、「ソフィスティケイテッド」のパターンはスネアの音色が抜かれています。
「Roomrunner」のアウトロ
Roomrunner
KR-55は1976年にKORGから発売されたリズムボックスです。
この機種、完全なプリセット型のリズムボックスで、プログラミングはできません。
1982年になってからKR-55Bというモデルチェンジ版が出たのでセールされていたものを、貧乏ヒラサワさんが見つけたと勝手に妄想します。
KR-55の音色を初めて聴くことができるのはカセットでリリースされた『Perspective II(1982/3)』です。
カセットB面の「Solid Air」と「Blümcale」になります。
「Solid Air」では、”DISCO 2”というプリセットが使われています。
「Blümcale」では”DISCO 4”です。
そのあと、ニューウェーブコンピレーションである『レベル・ストリート(1982/12)』には田中さんがまだ在籍している間に作られた「フル・ヘッ・ヘッ・ヘッ」で使われています。
貧乏だった当時のヒラサワさんにとって相棒だったのかよりパーソナルな作品である『不許可曲集 vol.1(1983/3)』でも、KR-55はフィーチャーされています。
「Gitai no Waza」では「Solid Air」と同じDISCOプリセットをテンポ下げで使用しており、その他に「二重展望2」のリサイクルである「Zikken Sitsude Kimi To」でも”DISCO”が使用されており、ヒラサワさんお気に入りのフィルインだったのか、それとも当時『ディスコ』を気にしていたのかは不明です。。。
「Shasizu」でもKR-55の音を聴くことができます。”BATH ROOM SYSTEM”なるヒラサワさん自作システムによるスプリングリバーブの音が独特の味をだしています。
(LogicのSpace Designerで再現)
音はKR-55によく似ています。がTR-505みたいなプログラミング機能があり自由にリズムを組めました。
『SCUBA(1984/9)』で大フィーチャーされていて、「SCUBAといえばKPR」感があり、初っ端「Frozen Beach」から使われているまさに”象徴”です。
「BOAT」などで、Linn LM-1と合わせて使われている(と思われます。)
『P-MODELがリンドラ?』と思われるかもしれませんが、実は『ANOTHER GAME(1984)』以降、何度か耳にすることができます。証拠に、『音楽産業廃棄物・Opensource』の117ページ目にちゃっかりとLM-1を打ち込むヒラサワさんの姿があります。
注(2021):当時は似たような音のYAMAHA RX4も使ってたみたいです。
さて、500台しか生産されていない上に4999ドルもする高価な機材を当時のヒラサワさんが買えるはずもなく、恐らく音廃に記載のある中野の『サウンド・スカイ・スタジオ』のものでしょう。もしくは、有島”神尾”明朗氏のACユニットのものかもしれません。(SCUBAでも耳にできるので)
当たり前ですが、P-MODELの中でドラムがLM-1だけの曲はありません。
LM2同様に、この機種は当時のはやりでしたが、ヒラサワさんは気に入らなかったのかもしれません。
『ANOTHER GAME』では生ドラムと合わせて使われていて、かつエフェクトが深いので聴き分けがかなり難しいです。『HOLLAND ELEMENT』と『MOUTH TO MOUTH』、そしてかなりwetなのですが、『AWAKENING SLEEP ~α click』は確実でしょう。
『SCUBA(1984)』では、わかりやすもので『BOAT』『FISH SONG』 ちょっとわかりにくく『LOOPING OPPOSITION』と『REM SLEEP』です。
『FROZEN BEACH』で鳴らされている印象的な16分のタムですが、カセットブック版ではKPR-77なのに対し、CD版では『ANOTHER GAME』の頃のようなLM-1のタムが聴こえます。
そもそも似た別の音源(M1?)なのかそれともヒラサワさんが84年を思い出しながら作ったのかは謎です。
この他に、旬の作品でもいくつか似た音が耳にできます。
こちらはほとんどdryな処理になっています。『サンプリング』がテーマなユニットだったのでそういうコンセプトだと思いますが。。。
『SHUN II』はモロですし『SIPHON』にも『1778-1985』でも耳にできますが、『カルカドル(1985)』版の『1778-1985』は生ドラムです。
これより以降のP-MODEL作品では生ドラム・サンプリングが混在して使われることになり、さらに特にアイコニックな音もないことから、特に特集はしません。
またいつかこういうコラムを書きたいと思います。